自己紹介

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2015年2月10日火曜日

自由は隷属なり そして泣く自由が最後の権利

 
 ∧∧
( ‥)自己責任というと
 
  (‥ )自己責任というと
      例えばだな
 
 ガンは切らずに直ります。抗ガン剤も必要ありません。
 
 これを買って、読んで、信じて、そして実行した人は、その結果を自己責任で負うべきであろう
 
 いや、実のところこれも正確ではない。べき、うんぬん以前に、単純な話で、他の誰も責任を取れないのだ。
 
 例えば、分かった、じゃあ君の身代わりに僕が死のう! と言ってくれる人がいても、ガンの進行は止まらない。他の誰でもない、結果はまず第一に自分にのしかかる。
 
 べき、の問題ではないのだ。現実はそのように進行する。ただそれだけである。
 
 ∧∧
(‥ )ガンは切らずに直る
\‐  そんな本を読んで死んだ人に
    でも、それは
    自己責任だよね?
    そう言ったら
    激怒する人いるだろうね
 
  (‥ )そりゃ怒るだろうな
      でも困ったことにさ
      自分で買って
      自分で読んで
      自分で信じて
      自分で実行した
      わけだがな
 
 例えばの話、この状況でだ、出るところに出て、果たして勝てるの? という問題である。
 
 それでもしかし、人によっては言うであろう。
 
 なぜこんな本を出版社は出すのか?
 
 責任を感じないのか?
 
 ∧∧
( ‥)責任を感じますか?
 
  (‥ )俺はそんな本を
      書いたことはないけども
      責任を取れと言われたら
      やりようはあるな
 
 全ての人に四ヶ月に一度、テストを受けさせる。その得点に応じて人間をランクに分け、それぞれのランクに応じて読むべき本と、読んで良い本と、読んではいけない本をそれぞれ決める。
 
 あなた、Dランクですね? ではこの本を読んでください。読まなくちゃ駄目かって? あのね、あなたいいですか? これは義務なのです。後日、レポートの提出があります。感想文ではありませんよ。レポートですよ。合格できたら説明を受けることができます。
 
 えっ?? 今、説明を受けたい? いや、それは駄目です。
 
 はあ? 別のお医者さんの意見を聞きたいし、他の本を読みたい????
 
 何を言っているんですかあなたは。
 
 あなたDランクでしょ? 馬鹿なトンデモ医療を信じて鵜呑みにしちゃうでしょ? それで死んじゃうでしょ? そんなことはさせませんよ。勝手に読むのも駄目ですよ。もしも許可無くDランクのあなたがそんな本を読んだ場合、逮捕されて、処罰されて、Eランク行きですからね。
 
 ∧∧
(‥ )...まあこれなら
\‐  責任ある対応ですかね
 
  (‥ )自己責任も取れない奴に
      自由に本を選ぶ自由なんか
      与えられるわけが
      ないからな
      判断の自由も無い
      考える自由も無い
      その代わりに
      死ぬ自由も
      行使出来ないわけだ
 
 責任というのはこういうことだ。自己責任が無い世界に自由なんかあるわけがない。責任も判断もできない人間に自由など与えられるわけがない。
 
 だが、人にとってはこう言うのではないだろうか?
 
 おかしなトンデモ本を無くせと言っているのだ、と
 
 ∧∧
(‥ )でもトンデモとまっとうの
\‐  区別なんか
    一律につけられないよね
 
 (‥ )ケプラーは星占いを
     信じているが故に
     業績を上げた
     ケプラーの宇宙論は
     神秘で出来ている
     ガリレオはその反対だ
     彼は星占いを否定し
     それで失敗した
     その失敗を教会に突かれて
     彼は失脚したのだ
 
 トンデモだから一律に規制せよ、それは言論の自由の侵害だ、とか言う以前の問題なのである。
 
 トンデモでもなんでも、それは間違っていても役立つことはあるのだ。それゆえに一律に否定することなどできない。
 
 ∧∧
( ‥)ガンは切らずに直ります
    抗ガン剤もいりません
    これが役立つ側面が
    あるとは思えませんけどね
 
  (‥ )そうだろうな
      では個別の問題として
      考えてみようか
 
 ああ、しかし、ここまで来て、結局、話は振り出しに戻ってしまうのである。
 
 ガンは切らずに直ります、この手の本は、”自分で判断して自己責任を取れる大人”が買うべき場所に置かれているのだ。
 
 実際、隣にはもっとまともな本もあるのだから言い訳はできない。
 
 しかも、作者は嘘を書いているわけではない。単に間違ったことを信じているだけだ。間違っていること、これ自体は意図的な嘘ではない。つまり少なくとも意図的な詐欺にはなりえない。
 
 この状況において、この本を規制せよ、というのはいささか厳しい。
 
 ∧∧
(‥ )自由とは恐ろしいものである
\‐ 
 
  (‥ )1984年のスローガンに
      あるだろ?
      ”自由は隷属なり”
      あれは正しいのだ
      自由とは
      現実への屈服なのだ
 
 以上を見れば分かるように、自由とは、あまりにもろくでもないものである。実際、人間を自由にすると不幸になったり、あるいは死ぬのである。というか、そういうことが普通に起こる。親が、子供に敷かれたレールの上を歩かせようとするのは、実のところまったくの正論なのだ。
 
 つまり、人間を幸福にする道とは
 
 考えるな
 判断するな
 疑問を持つな

 である。
 
 ∧∧
( ‥)でも幸福の道は
    不安定なんだよね
 
  (‥ )幸福は最適解だが
      変動する世界において
      固定された最適解は
      存在しない
      我らの世界は修羅の世界
      果てしなき軍拡競争を
      続けねばならぬ
      この世界では
      考え、判断し、
      疑問を検討することが
      強制されるのだ
      そしてもちろん
      失敗したら死ぬのだ
 
 つまり諸君、これは福音である。誰もが幸福になることを一切許されないであろう。それがゆえに自由は世界に君臨し、自己責任が強制される。すべての民が自由の前に屈服し、自己責任に隷属し、呻吟するであろう。
 
 自己責任の地獄が世界に顕現するのだ。これぞ自由の道である。
 
 ∧∧
(‥ )泣きたくなるような話だね
\‐
 
  (‥ )いくら自由だ
      自己責任だ
      これは覚悟だと言ってもな
      みんな最後はつらいのだ
      格好良くは
      死ねないしなあ
      いやな世界だよね
 
 そして、愚痴をこぼし、泣く自由だけが最後の権利として残る。
 
 
 
 

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