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2014年1月21日火曜日

次の系譜はどの物語?

 
 エヴァンゲリオンは「地球幼年期の終わり」のぱくりであると、人は言う。
 
 ∧∧
(‥ )...二作品の共通点って
\‐  人類が新たな存在になる
    人類がひとつになる
    旧世界は没落する
    それを画策推進する
    存在がいる
    それだけじゃないの?
 
  (‥ )というかだな
 
 「地球幼年期の終わり」がそもそも「ヨハネの黙示録」のぱくりじゃね?
 
 ∧∧
( ‥)異教が支配するローマは
    やがて滅びるだろう
    人類はキリスト教徒のみとなる
    彼らは新たに
    永遠の命を約束されて
    ひとつとなり、そして
    旧世界は没落する
    さらにそれを画策する
    存在がいて、
    彼らは状況を
    推進するために
    使徒を送り込んでくる
 
 
  (‥ )それがヨハネの黙示録
      新約聖書の最終章だ
 
 アーサー・C・クラークの作品、「地球幼年期の終わり」は米ソが宇宙開発競争で宇宙へ行こうとしたその時、異星人が地球にやってくるところから話は始まる。異星人のゆるやかな統治で人類は戦争のない時代を迎え、繁栄するが、異星人には目的、いや、使命があった。
 
 宇宙の物理的な理を自在に操る超絶的な技術を持つ異星人たち。不死と言えるほどに長い寿命。重力を操作する技。慣性を制御し、自在に光速へと到達できる宇宙船。長い歴史を通じ、銀河系をあまねく旅して得た知識。
 
 だがその彼らより上位の存在がいる。物理的な理など超越し、空間も光速も時間の枠組みさえも飛び越えた異形の存在。
 
 その存在に命じられて異星人たちはやってきた。その使命とは人類を完全突破させること。
 
 ある日、ひとりの少年から始まったその現象は瞬く間に全世界の子供に広がる。それはいわばテレパシーに近い能力なのだが、それ以上のものであり、そして個を失うものであった。

 彼ら子供たちは別の存在。全部でひとつの超越的なものとなる。
 
 ∧∧
( ‥)そして子供を奪われた旧世代は
    絶望の中で滅び、
    新たな存在となった子供たちは
    地球を破壊し、吸収し、
    世界を滅ぼして、
    そのより上位の存在へと
    合流する
 
  (‥ )ひとつとなった新世代
      永遠の命
      旧世界の没落と破壊
      それを画策する
      超越的な存在
      彼らに使わされた使徒
      ほら、ヨハネの黙示録と
      幼年期の終わりは同じだ
 
 エヴァンゲリオン以前に幼年期の終わりがぱくりだ、ぱくり。
 
 ∧∧
(‥ )...でも、なんでもぱくりだと
\‐  言うのは感心しませんね
 
  (‥ )しかり、そもそも類似点を
      あげつらえば世界の物語は
      すべてひとつの
      ネットワークで結ばれて
      しまうからね
 
 つまるところ、これはこれこれのぱくりだ、と言うのはあまり意味のない話だと言える。
 
 *注:もちろん、類似点と共通項がある一定数を越えると、ぱくり、ではなく盗作と呼ばれることになることも事実
 
 ∧∧
( ‥)幼年期の終わりも
    エヴァンゲリオンも
    人類の進化と世界の没落を
    扱った物語の系譜
    といったところですかね
 
  ( ‥)まあ、実際の進化って
    ‐□ ああいうものじゃないから
      進化を扱った物語とは
      言えないけどもね
 
 実際、幼年期の終わりの世界観はダーウィンよりもはるか以前、ヨハネの黙示録と同じなのだ。そこにあるのは古典的な存在の梯子、存在は上昇を指向するという世界観で、進化論よりもはるかに古い認識の系譜に他ならない。
 
 ∧∧
(‥ )SFって進化論と相性が
\‐  悪いのですかね?
 
  (‥ )SFの理屈っぽい世界観は
      プラトン的なものが
      あるかもな
      イデア論を破壊することで
      理論を成立させた
      ダーウィンとは
      相性が悪いと思うよ
 
 確かに、ウェルズの「宇宙戦争」も「タイムマシン」もダーウィンの視点から見れば、ハチャメチャな作品なんである。
 
 ∧∧
(‥ )科学史的に見れば
\‐  どっちも興味深い作品ですよね
 
  (‥ )性を持たず機械の体を
      自在に脱ぎ換える
      完全な知的存在である
      火星人
      知性を失い楽園の中で
      享楽と性にうつつを
      抜かす廃墟の未来人
 
 描かれている世界に整合性を持たせようと思えば持たせられないこともないが、かなり無茶があるのは事実。
 
 ∧∧
( ‥)それでもあの世界は
    すばらしいと
 
  ( ‥)原著ではカットされた
    ‐□ という”灰色人”の話
      などは強烈なものが
      あるよね
 
 タイムマシンの冒険にはカットされた話があるという。80万年後の未来、知性を退化させた優雅で無邪気な子供のような人々と、かつて地下に閉じ込められた労働者階級の子孫である夜行性、人肉食の種族モーロック、彼らの世界からさらなる未来へ進んだ主人公が見たのは、浸食で平坦となり、寒冷化して霜が降りる草原の世界。そしてその中を駆け回るのは、小さなカンガルーのように進化した草食獣としての知性無き人類の子孫だった。
 
 さらにその先にあったのは世界の終わり。終末を迎えて赤く冷えた太陽。自転が止まった地球の空はもはや動くことなく凍てつき、寒々しい光景の中に見えるのは地衣類がこびりつく岩と力なく広がる海、そして海岸を跳ねる謎の存在のみとなる。
 
 ∧∧
( ‥)マン・アフターマンなんかは
    そういう知性を喪失した人類と
    世界の没落を描いた物語の
    系譜なんでしょうね

 
  (‥ )環境変動で人類が
      滅び去り、
      地球に残されたのは
      遺伝子改造され
      野生の環境に適応した
      人類のみ
 
 知性を失ったが、新たな人類たちは様々な環境に適応した。大型哺乳類が軒並み滅ぼされた空っぽの世界で自由に進化し、色々なものが現れるのである。水中生活を営む者、肉食に特化したもの、アリを食うもの、樹上で暮らす者。かつて人類によって破壊された地球は、500万年の後に、再び豊かな世界になった。しかも、それら動物相を構成するのは今度は人類なのだ。
 
 だがその時、宇宙から”異星人”がやってくる。彼らは地球を”自分たちに合った環境”に変え、そして必要なものを得て地球から立ち去る。その過程で新たな人類たちは絶滅し、環境は完全に破壊される。地上は不毛の荒野となり、生物は見当たらず、空は異様な色に煙るのみ。
 
 ただ、海の底にわずかな生物たちが生き残った。そしてそこに不思議な動物がいる。それは地球人として最後に残った種族。かつて遺伝子改造でえら呼吸が出来るようになり、そのまま深海に適応した人類の子孫だ。暗黒の世界で視力を失い、新たな器官を持つに至った彼らだが、時間さえあるのなら、自然淘汰によって再び、光の世界と破壊されてしまった地上へと戻ってくるだろう。
 
 ∧∧
( ‥)そして一方、地上を
    破壊しつくした異星人も
    かつて地球を離れて
    異星へと旅立ち、
    地球と異なる環境において
    遺伝子改造と自然淘汰で
    異形の進化を遂げた
    人類の子孫だったという
    オチでね
 
  ( ‥)こうして物語の系譜は
    ‐□ 伝統を受け継ぎつつも
      新たな要素を加えて
      先へと進んでいくのだ
 
 次の系譜はどの物語?
      
 
   

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