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2014年1月12日日曜日

解探索にはリレースイッチで充分でしょう

 
 ∧∧
( ‥)人間はCPUじゃなくて
    リレースイッチ?
 
  ( ‥)ああ、さっきネット上で
    ‐□ 見た表現
 
 より正確に引用すると、
 
 人間はもうCPUじゃないんですよ。人間はCPUじゃなくてリレースイッチか何かで、その事実に気がついていないんです
 
 という言葉
 
 ∧∧
(‥ )リレースイッチってあれだよね
\‐   電磁石で回路を切ったり
     接続したりする機械のこと
     だよね
 
  (‥ )この場合は
      コンピューター関連だから
      演算に必要なオンオフを
      電磁石で行う部品のこと
      だな
 
 ∧∧
( ‥)進化を解探索の過程だとすると
    人間にせよ生物にせよ
    それぞれの個体は
    解探索のための
    演算回路の一部だよね
 
  ( ‥)だからそもそも
    ‐□ 最初っから人間は
      CPUでもなんでも
      ないんだよな
 
 人間も、他の生物も、進化という過程全体から見たら、真空管とか、あるいはそれこそリレースイッチでしかない。最初から自立して解探索を行えるような存在ではそもそもないんである。
 
 そういう意味で見ると、先に引用した言葉はかなり的外れだとも言える。人間が知的生物であったことなど、この意味においてただの一度もなかったし、人間が巨大な演算回路の一部でしかない、これも先刻承知の単純な事実だ。別に珍しい話でもなんでもない。
 
 だいたい、人類よりもはるかに急速な進化を可能ならしめたインフルエンザウイルスが人類と熾烈な争いをしている時点で、知能なんてものが解探索において必要ないことは明白。
 
 ともあれ、しかし


いそいそと図書館に出かけて「コンピューター開発史」大駒誠一 2005 共立出版 を借りてくる。
 
 ∧∧
(‥ )例えば1943年に完成した
\‐  ハーバード・マーク1は
    電話交換機で使われていた
    リレースイッチを
    使用したコンピューター
    だけども、当時、すでに
    時代遅れであったと
    *上記文献pp99を参照
 
  (‥ )電磁石で金属片を
      吸い付けて
      オンオフする以上
      動作に時間がかかる
      必然的に計算速度自体が
      遅くなる
 
 安定した性能を持つためにハーバード・マーク1自体はこの後15年も使われたそうだが、電磁石のオンオフという仕組みは真空管やトランジスタに取って代わられていったそうな。
 
 こういう知識を知ると、先の言い様も見方が変わる。
 
 ∧∧
( ‥)そんなこと自分で
    考えればすぐ分かるのに
    なんで電磁石のオンオフの
    ような動作しているの?
    なんで真空管以前なの?
    なんで自分で考えないの?
    脳みそもってるんでしょ?
    そういう指摘ですね
 
  ( ‥)まあ、普通に考えて
    ‐□ そうなんだろうな
 
 考えればすぐ分かることなのに、なぜ考えずにちんたらのろまな演算をしているのか?
 
 検索してみたら、これは2011年、年末におけるドワンゴ会長さんの言葉だったらしい=>4Gamer.net ― 「ひろゆき」みたいな人間が増えていくと,人類は滅亡する!――川上量生氏との対談企画「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」年末特別号
 
 ∧∧
(‥ )もう3年前なんだね
\‐  3年前の記事が引用され
    引用され、引用され...
    そうしてあなたの眼に
    触れたわけだ
 
  (‥ )興味深い発言が
      多いよね。
      ロジックで考える
      合理主義者はコピーを
      増やせるから
      ネットの発展で人間が
      均質化する
      家畜は脳が小さくなって
      いるから自己家畜化で
      人間も脳が小さくなる
      人間はいわば
      リレースイッチになる
      全体で考える
      考えない個人の集合になる
      そういう感じかな
 
 
 その局面で最大の利益を出せる個体が数を増やす。その原理からすれば、確かに個体群は最良個体のクローンで埋め尽くされる。
 
 それは正しい
 
 ∧∧
(‥ )そういうクローンを
\‐  食い物にする連中が現れるから
    すぐに全滅しちゃうけどね
 
  (‥ )そもそもだから人間は
      色々な変異の集合体で
      均一でもなんでもない
      ものなわけだがな
 
 人間が均一になったら全滅する、というのは正しいが、均一になると全滅するがゆえに、人間が均一になることはありえない。なるんだったらそもそも進化の過程ですでになっているはずだ。だがそうではない。現実とはそういうものだ。
 
 家畜化で脳が小さくなる。人間も使わないから脳が退化するに違いない。
 
 ああ、ここは獲得形質を信じているらしいうんぬん以前に気がつくべきだったのだ。脳が小さくなるとは、脳は小さい方が良いことを示しているのだと。脳は不経済な存在で、できれば小さい方が良いのだ。そこにこそ気づくべきだった。
 
 ∧∧
( ‥)あなたたち、無駄に脳が
    大きいから、無条件に
    脳が大きい=素晴らしいと
    考えるんだよね
 
  ( ‥)んー、でもこれは
    ‐□ あれだよね
      多分、自分で考えて
      道を切り開いて
      走り続けた人らしい
      発言だとも言えるよな
 
 考えて道を切り開いたのなら、考えることがいわば至上命題になるだろう。のろのろちんたら、分かり切ったことすら計算できない、真空管以前のぽんこつコンピューター、というか、その部品でしかない代物に他人が見えてくる、というのは必然。
 
 このような人からすれば、脳が小さく退化していく、という未来像は恐怖
 
 確かにネットの煽りサイト、つまり考えない人間のために考えない記事を書き、それを考えない人間が鵜呑みにして炎上するという相乗効果を見れば、人間にはもはや個体としての知能はなく、むしろ集合自体にこそ意識と演算能力があり、巨大で無自覚でおぞましい悪魔的な集合意識のようなものが芽生えたように見える。それを嫌悪するのは当然。
 
 ∧∧
(‥ )この会長さん、あなたより
\‐  ひとつ年上なだけだよね
    ずっと地を這いずってる
    あなたとはえらい違いだよね
 
  (‥ )走り抜いてきたんだろう?
      起業するのみならず
      企業をつぶさずに
      維持してきた
      そのストレスと労力たるや
      我々には想像もできない
      ようなしろものよ
      それに耐え切って
      解決策を考え
      そして走り抜いたなれば、
      以上のように考えるは
      必然よな

 
 だがしかし、こういう憂いは、はるか太古から、賢い人たちによって繰り返されてきた話でしかないとも言える。そうではないか?
 
 ∧∧
( ‥)そして残念、
    解決策は有能な人ではなく
    国を憂える知識人でもなく
    考える人でもなく
    そうではなくて、
    阿呆で馬鹿で無名で
    暴虐で惨めで
    無様に死んだ人々こそが
    成し遂げたものであった
 
  ( ‥)集合は巨大でいわば
    ‐□ 慣性を持つがゆえに
      簡単には変わらない
      変えるには死が必要だ
 
 集合を変えるには部品である人間の死と置き換えが必要だ。死が必要なのは当然。
 
 そして演算するにはやはり死が必要だ。失敗か成功か? そのオンオフは死で表現されるから。
 
 そして結果でしか正否が判断できないのであれば、馬鹿でもなんでも試みるしかないんである。そして死んでゆく、それだけの話。
 
 死ぬ以上、個人では解探索が出来ないのは道理。個人は死んだらそこで終わりなんである。
 
 考える個人とは無力な存在でしかない。
 
 考えるとは、実はなんと非力なことか。
 
 ∧∧
(‥ )考える人は何も出来ず
\‐  憂いは杞憂で終わり、
    無名の人々は
    命と引き換えに
    正しい解を発見する
 
  (‥ )ただ、その解答は
      考えて得たものじゃない
      だから異様な解なのだ。
      だからこそ、考えても
      出てきやしないのだ
      困難に直面したローマの
      最終解がキリスト教帝国で
      あることなど、
      一体誰が予想できたか?
      これは昔からそうだった
      ネットの時代になっても
      何も変わりやしない
 
 
 考えて走り抜き、切り抜けた人からすれば、リレースイッチでしかない凡人は許しがたい存在かもしれないが、残念。解を見つけるのは彼らなのだ。

    
 

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