自己紹介

イラストレーター兼ライター 詳しくはhttp://www5b.biglobe.ne.jp/~hilihili あるいは詳細プロフィール表示のウェブページ情報をクリック

2013年11月12日火曜日

教科書ハン国

 
 人が曰く、読書の目的は話題になるトリビアを知ることであるから、ネットがある現在、読書も本も無意味である。出版界に未来はないと。
 
 ∧∧
( ‥)なぜこれを言う彼は
    教科書も本であることを
    失念しているのであろうか
 
  ( ‥)まあ、教科書を読むのは
    ‐□ 授業や予習、復習であって
      読書とは言わないからな
 
 あるいは、文学を読む事、読書感想文に値する本を読んで報告書を書く事が読書感想文である、という循環論法的な訳分からん課題をやらされたことが原因なのかもしれない。
 
 ∧∧
( ‥)こういう課題を強制された
    後では、もはや
    教科書を読むことは
    読書ではなくなる
    そればかりか読書自体が
    否定すべき悪になる
    そんなとこですかね
 
  ( ‥)そして人間は
    ‐□ 本を読む動物ではない
      実際、クラスのことを
      思い出せば
      本を読んでる奴なんて
      ごくわずかだしね
 
 うんざりする教科書。やりたくもない授業。強制される読書感想文という退屈な課題。自分には色々な意味で訳が分からない本を読む一部のクラスメート。それは難しいのかもしれないし、変態的なのかもしれない。
 
 ∧∧
(‥ )まあ、大概の人にとって
\‐   本というのは
     悪いイメージしかない
     のかもしれない
 
  (‥ )冒頭の言葉も
      そういう視点で理解すべき
      だと思うよ。
      彼にとっては話題作りと
      暇つぶしと気晴らしに
      手に出来る雑誌が
      本の全てであった、
      そういうことじゃね?
 
 そういう世界観なら、それが丸ごとネットに置き換わりそうな現在の状況を見れば、出版界に未来があるはずがない、そう思うのは当たり前だろう。
 
 だがしかし、本というのは格差を作るアイテムだ。そうである限り、それに気づく人がいる限り、本はそのままであり、出版界という連邦は雑誌領域を失っても存続することになる。
 
 もちろん、本が格差を作るアイテムであることを否定する人も多い。
 
 ∧∧
( ‥)本が格差を作る、
    つまり、
    この本を読むあなたは
    読まない人と差を作る
    ことができます
    そういうことですよね
 
  (‥ )極めて商売的だろ?
      極めてインチキ臭い
      セールストークだけどね
      というか、
      ほぼインチキだがな
 
 実際、ある人が曰く、本を読むとさ、知識や知恵がつくっていうけどさ、今時の新書なんて、ネット記事のぱくりみたいなもんじゃん
 
 ∧∧
( ‥)正しい主張ですよね
 
  ( ‥)うん、正しいよ
    ‐□ 新書に限らん、
      社会人とやらが読む
      ビジネス本なんか
      ほとんどそうだろ
 
 この本を読むあなたは読まない人よりも一歩先にいけます。社会人という競争の中で、なんとかライバルと差をつけたい。この手の意識高い系の人間を、こういう胡散臭いセールストークで誘惑する。
 
 外法
 
 ∧∧
( ‥)これに嫌悪感を持つ人が
    いるのは….
    当然ですよねえ
 
  (‥ )そりゃあ当然さ、
      ただな、
      嫌悪感を持つことと
      現実の判断は別だよ
 
 嫌悪感を持つのは当然かもしれないが、
 
 だから俺は本を読む必要はないし、
 
 だから本を読んでも他人と差はつかないに違いない、
 
 と言い訳するのは正しくない。
 
 ∧∧
( ‥)言い訳ね
 
  (‥ )言い訳だろ?
      最低限あれだ、
      出来の悪い新書を批判して
      本全体を否定できた気に
      なっているとしたら
      それは彼自身が、私は
      出来の悪い新書以上の本を
      読んだ事がございません、
      読む能力も持っておりません
      そういうことだからね
 
 大雑把に言ってしまえばである。出来の悪い新書以上の本を読んだ事がないのなら、必要な書類だって読めなくなる。だったら、もう自分には未来がない、と考えるべきだ。
 
 いや、あるいは未来がないとすでに分かっているから、悟ったような否定を述べているというべきか。

 
 ∧∧
(‥ )もちろん、経営者として
\‐   起業家として
     まともな本を読んだ事も
     ないまま
     のし上がれる
     可能性もあるんですけどね
 
  (‥ )そりゃあね、
      ギャングや盗賊上がりでも
      村を占拠し、
      町を占領し、
      近隣を征服して
      国を作ることが
      出来るからね
 
 とはいえ、そんな極端な例でも結局は統治するための法律や官僚が必要になり、そのためには”出来の悪い新書以上の本をちゃんと読める能力のある人間”を雇用して、しかるべき地位につけ、厚遇しなければならない。
 
 ∧∧
( ‥)自分自身は
    本を読めなくてもいいけど、
    必要な本や書類を読める人間を
    ちゃんと嗅ぎ分けなくては
    ならないのだと
 
  (‥ )そういう人間がだよ?
      出来の悪い新書が
      どーしたこーしたなんて
      ぐだぐだ言い訳するかよ
 
 俺、武力はあるけど、文字は読めないんだよね。でも、聞いた限りでは彼は法学者として著名だよね? 読んでもらったけど、なんかいい感じじゃん。彼の能力ってどうなの? 俺の国の事務作業を任せられる能力ある? うちで働いてよって言ったら、来てくれるかな? 幾らぐらいかね?
 
 ∧∧
( ‥)まあ、そう聞いてくるだろうね
 
  ( ‥)統治とか経営ってのは
    ‐□ どうしてもそうだからね
      今の日本だって、
      国の意思は選出された
      議員だけども、
      国の運営の事務作業は
      上位成績を納めた
      官僚たちだよな
 
 見方を変えればだ、
 
 読書の目的はトリビアを得る事
 
 今時の新書は所詮、ネットのぱくりじゃん、本なんか読む必要なし
 
 これらの発言は、やばくね?
 
 ∧∧
( ‥)というか、発言者の
    皆さんの立ち位置が
    分かりますよ、と
 
  (‥ )敗者だべ
 
 考えてみれば、私たちが一番読んでいる本は、漫画とラノベと、しかしそれ以上に教科書ではなかったか? 
 
 そもそも、それに対する読解力と読書量と読み込みの差で私たち自身の、今の立ち位置があるのではなかったか?
 
 その運命の分かれ道はいつだったか?
 
 それは小学校とかあるいは中学校ではなかったか?
 
 そこから先を思い返してみよう、自分の立ち位置と人生はどうであったか?
 
 ∧∧
( ‥)敗者だと
 
  ( ‥)書類。これを読むのも
    ‐□ 読解力の差でな
 
 読解力と読む能力がなければ書類を処理することなどできない。
 
 この能力がなくてもなお、切り抜いていくのならば人を見極める力を持たなければならない。
 
 いずれにせよ、そういう能力を持つ人間が、トリビアだの、駄目な新書があるから必要ないだの、そんなことを言うのか? あるいは以上で引用したような文脈で言うのか? という話。
 
 ∧∧
(‥ )まあ、言っても問題なく
\‐   出世できる立ち位置も
     あるんですけどね
 
  (‥ )本業はすっかり外注して
      しまって、
      下請けを虐げて
      点数つけるだけの
      ぶくぶく太った
      死に損ないの大企業で
      家畜みたいな人生を送る
      連中とかな。
      まあ、勝ち組ではあるよね
      精神を病むけどな
 
 
 とはいえ、人生というのは小学校とか中学校の時点でほぼ決まっているようなもんである。そして、勝者が数十万文字の書類を見終わった後で、息抜きに漫画やラノベを読むのと、敗者が数千文字のネット記事を読んで、やっぱ本なんか必要ないじゃん、と息抜きしているのとは、同列には扱えない。
 
 
 これはhilihiliのhilihili: 漫画共同体 ラノベ王朝 教科書ハン国の続き
 
 
 ところで
 
 ∧∧
(‥ )ところで、ビジネス書って
\‐   連邦のどこに
     あるのでしょうね
 
  (‥ )体裁は教科書だけど
      全部ではないにせよ、
      中身はラノベっていうか
      悪い意味でのラノベだよな
 
 多分、教科書ハン国とラノベ王朝の中間あたりに、べにょーっと広がっている感じ。
 
 ∧∧
( ‥)お客は?
 
  (‥ )読書はしたことないが
      社会での必要性に
      せまられて慌てて
      読んでます
 
 ∧∧
(‥ )馬鹿にするな! 
\‐   みんな仕事の合間に
     頑張って読んでるんだって
     怒りますよ?
 
  (‥ )いや、だからな
      努力するんだったら
      もっと前からしろよ
      という話よ。
 
 それを聞いて、じゃーやーめた、と放り出すのか、馬鹿にするな! とぐるぐると同じところを回るのか、ほら読んでも無駄じゃん、と冷笑して、たわいもない活字でトリビアするのか、あるいは読んだけど、これは、その、全部が全部駄目とは言わないが…と頭を抱えつつもわずかな成果を読み取るのか、それとも、これは普通に大丈夫な本です、そうきちんと見極められるのか、あるいは、泥縄も糧である! と見据えるのか、それは個人個人の力量なんだろう。
 
 
    

ブログ アーカイブ