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2013年8月9日金曜日

逃げた騎兵をみんなでボコる

 
 
 ∧∧
( ‥)なに?
 
  ( ‥)[WARHORSE]という
    ‐□ 本があってね
 
 [WARHORSE] Philip Sidenell 2006
 
 ようするに古代世界における軍馬の本なのだけど
 
 ∧∧
(‥ )アレクサンダー大王の遠征
\‐  大王の急死、帝国の分裂
    これによってマケドニアの
    騎兵隊はその本来の力を
    失ったと
 
  (‥ )騎兵隊は大王の遠征に
      ついていっちゃったし、
      急逝したんで帰還せず、
      分裂と後継者同士の戦争で
      都市の経済は弱まり、
      騎兵を充分に供給できなく
      なる、そういうことが
      書いてあるなあ。

 困ったことがあるとすると、これらの部分に関して典拠が直接書かれていない、ということで。
 
 ∧∧
(‥ )でも、整合的ではありますね
\‐  ローマ軍がマケドニア軍を
    破った二回の戦い、
    いずれも騎兵の描写が
    ほとんど皆無ですからね
 
  (‥ )「プルターク英雄伝」を
      見ているだけだから
      まだ理解として充分では
      ないんだけど、どうも
      騎兵の数が少ないか、
      運用が良くないらしいの
      だよな。
 
 岩波版の第五巻ティトウス・フラーミニーヌス編での戦いでは、マケドニアの密集部隊を打ち破ったのはローマ軍の歩兵部隊であるし、第四巻アエミリウス・パウルス編でも同様。
 
 ∧∧
(‥ )というか、あれですね、
\‐   アエミリウスに
     ペルセウス王が敗北、
     負けて敗走する
     マケドニア軍の間で
     争いが起きたみたいですね
     騎兵のところを歩兵が
     裏切り者! と罵って
     馬から引きずり下ろして
     殴り始めるという
 
  (‥ )他の文献も見ないと
      いけないけど、
      英雄伝だと、ほんと、
      この二つの戦いには
      歩兵の記述しかないのよな
 
 しかもほぼ全員が脱出できた騎兵を、後から追いついた敗走の歩兵たちが「この、卑怯な裏切り者!」とみんなでボコリ始めるという内容から察するに
 
 ∧∧
( ‥)やっぱ、騎兵の数が
    絶対的に少ないって
    ことですかね
 
  (‥ )しかも台詞と記述から
      すると、
      先に逃げた以前に
      騎兵は結局、
      戦闘に投入されなかった、
      結果的に歩兵を
      見殺しにした
      そういうことじゃねえの?
 
 数が少ない騎兵は戦場では意味がなさそうだし、数が少ないから王様が投入をためらっているうちに歩兵が負けてしまえば、まあ、騎兵としては逃げるしかないだろうし、でも歩兵からすれば許しがたいだろう。
 
 繰り返せば、ほとんどが無事に離脱できた騎兵が、仲間の敗残兵にぼこられるということは、
 
 ∧∧
( ‥)つまり、歩兵が
    圧倒的に多い。
    騎兵は少ない。
 
  (‥ )そういうことだよなあ
 
 
 ∧∧
(‥ )騎兵ってお金がかかるの
\‐  ですよね
    経済的な条件が悪いと
    数をそろえられない。
 
  (‥ )馬がいます。
      馬の維持管理が必要です
      世話をする場所と
      人が必要です。
      もうこれだけで
      金がずいぶんかかる
      からね。
 
 ましてや訓練された騎兵となったら、そりゃあ育成するだけでも金が相当かかるだろう。訓練期間中、人と馬の両方を養わないといけない。
 
 だが、金はかかるし特殊技能だけども、騎兵は強い。
 
 ∧∧
( ‥)なんでしたっけ、
    モンゴル以前の中国、
    金帝国の騎兵17騎が
    南宋の歩兵2000を
    退けたって話がありましたね
 
  (‥ )金帝国は遊牧系の王朝
      騎兵と言っても
      古代世界よりも
      装備がそろっているし、
      複合弓を自在に使う
      長距離攻撃可能な戦士。
      古代世界の騎兵と
      同列に扱えないだろうけど
      騎兵が圧倒的に強力なのは
      分かるよね。
 
 
 ∧∧
(‥ )ローマ軍も6世紀に入ると
\‐  騎兵が主力になると
 
  (‥ )よく訓練された、でも
      数が少ない特殊技能の
      能力者たちだけに
      なっていったわけだ。
      この時代になると
      歩兵はいるけども、
      以前のような規律正しく
      訓練された兵士では
      なかったそうだよ。
 
 ∧∧
( ‥)でも特殊技能者で装備が
    必要な騎兵の維持には
    金がかかる
 
  (‥ )それが極端に現れたのが、
      存続した東ローマの
      対極にある
      西欧世界の騎士だよね
 
 再現なく分裂した西ローマ帝国の残骸にいるのは鎧でその身を覆い、周囲の土地と農民を支配する重装備な騎士たち。
 
 ∧∧
( ‥)民主制と訓練された
    歩兵の時代は終わり、
    お金がかかる超兵器と
    特殊技能を教え込まれた
    軍人貴族の時代が
    やってくる
 
  ( ‥)いつどこで、どういう
    ‐□ 感じでこの変化が
      起きたのか?
      よく分かってない
      みたいだよな。
 
 ∧∧
( ‥)反対に、帝政初期の
    ローマ軍って
    すごい低賃金だったの
     ですよね
 
  (‥ )タキトゥスの年代記を
      読んだりすると
      軍団は人が多くて
      人件費がかかるから
      気持ちは分かるけども
      いくらなんでも
      ひどくね? という
      低賃金でね。
 
 しかし、この、”貧乏人を集め、厳しく長い徴兵期間と訓練を受けさせる事で出来上がっていた大軍団”が、何世紀か経つうちに、金がかかる少数精鋭になって、さらには軍人貴族が誕生する。
 
 一体、これはどういう過程なのか?
 
 ∧∧
(‥ )まあ、軍馬の本にそこまで
 □‐  書いてあるか、まずは
    それを要確認ですか
 
  (‥ )そしていつも考えて
      しまうのだよね。
 
 我々の時代も、いつか民主制が終わり、恐ろしく高度化した機械を操る軍人貴族の世界へ変るのだろうか、と。
 
 ∧∧
( ‥)機械技術の発展は
    扱いの難しい超兵器を
    作り出す一方で、
    銃を抱えた市民兵
    みたいなものも
    生み出すから、
    未来技術が
    軍人貴族を作るか
    市民兵の大軍団を作るか
    予測しがたいものが
    あるけども
 
  ( ‥)なにがどういう風に
    ‐□ 世界のあり方を
      形作るのか?
      作ってきたのか?
      見極める必要が
      あるよね。
 
 これはhilihiliのhilihili: 人間はすぐに初心忘れるべからずとか言うの続き
 
 
 
  

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