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2013年3月16日土曜日

それが黄砂であると、なんと論証しようか?

 
 
 ∧∧
( ‥)つまり?
 
  ( ‥)そうねえ
 
 3月10日に起きた黄砂騒動。
 
 *3月10日に黄砂(中国における深刻な大気汚染によって汚れた黄砂)が日本、ひいては関東にも到達する。そんな予報がなされていた当日、強烈な風で舞い上がった関東ローム層の土ぼこりが東京や神奈川に襲来。辺り一面、黄色く煙って視界がせいぜい3kmにまで落ちた。ネットなどが騒然とするなか、気象庁がこれは煙霧であると発表すると、中国に配慮したマスコミの陰謀だ、気象庁はすでに中国に内部を乗っ取られている、という意見が駆け巡るなど、色々なことが起こった出来事のこと。
 
 ∧∧
( ‥)まあ、マスコミのことは
    取りあえず置いて
    おきましょうか
 
  ( ‥)あの人たちがやっている
    –□ ことは、言い出せば
       切りないからな。
 
 ∧∧
( ‥)でっ?
 
 (‥ )そうね、例えばおいちゃんも
     当日、すげー黄砂、
     と思ってたけど、
     落ちてきた粒子を観察したら
     どうも黄砂ではなく、これは
     関東ローム層由来らしい*
     そう結論したわけだ。

 
 
 だが、ここで問題である。
 
 ∧∧
( ‥)あなたは黄砂の粒子そのものを
    見たことがない
 
   ( ‥)少なくとも、当日
     –□ 採取した粒子は
        黄砂よりも
        ずっと大きい
        そういうことは
        言えたけどもね。
 
 だが、黄砂そのものを顕微鏡で見たことがない人間が言うことを果たして信用できるのか?
 
 ∧∧
( ‥)人によってはそう言うでしょう
 
   (‥ )もちろん、そう言う人も
       いるだろうね。

 
 だが、ここでさらに根本的な問題に突き当たる
 
 
 そうは言うけども、見方を変えてみよう。例えば、見つけたその粒子を黄砂であると判定するにはどうすれば良いか?
 
 ∧∧
(‥ )先日、見ていた環境省HPの
\–   黄砂パンフレットには
     黄砂を構成する鉱物に
     ついて書かれていますね
 
=>黄砂パンフレットのご紹介
 
  (‥ )石英、長石、雲母、
      そういう造岩鉱物に加え
      カオリナイト、緑泥石など
      粘土鉱物が含まれる。
      日本にまで到達する
      粒子の直径のピークは
      1000分の4ミリ
      そう書かれているな。
      ありがたいね。
 
 
 ∧∧
(‥ )後は人為的な汚染による
\–   硝酸イオン、硫酸イオン
     などが検出されると
 
  (‥ )汚染による化学物質を
      手がかりに判別するのは
      個人でやるにはきついなあ
 
 とりあえず、そういう論証は設備と技術を持った研究者や技師にまかせるとして、これが黄砂である、と見て確かめられるか? という話。
 
 
 例えばの話
 
 ∧∧
( ‥)1000分の4ミリ以下の
    微小な粒子を顕微鏡で
    みつけました
 
  (‥ )それだけだと、
      どこか遠くの畑や地面から
      舞い上がったものと
      区別できないよね。
 
 それが石英や長石だと確認できたとしても、それだけでは黄砂起源なのか、あるいは日本起源なのか分からない。
 
 ∧∧
( ‥)どうしましょうね
 
  ( ‥)毎日とは言わないが、
    –□ 黄砂が来ていないと
       されている日も、
       黄砂が来ていると
       されている日も、
       同様に観察して、
       比較するしか
       ないだろうね。
 
 ∧∧
( ‥)黄砂が来ていると
    されている日に顕著に多く
    観察される細かな鉱物粒子が
    あれば、
 
  (‥ )それが黄砂ではなかろうか
      そう推論することは
      出来るだろうな。
 
 もちろん、あくまでそれは推論だ。
 
 考えてみれば私たちはタクラマカン砂漠から風にのって移動する鉱物粒子を連続して追っているわけではないのである。今、目の前にある鉱物粒子が、砂漠の地面から舞い上がっていくところをあらかじめ観察して、一緒に空を飛ぶなどして追跡し、顕微鏡のスライドグラスに収まるところまで見守ったわけではない。
 
 つまり、なにもかも断片をつなぎあわせた推論なのだ。
 
 ∧∧
( ‥)もちろん、推論であるから
    駄目、というわけではないの
    ですけどもね
 
  ( ‥)それはそうだ。しかし、
    –□ 人間はおかしなもんでな、
       やたらと論理的に考えて
       推論や仮説をいい加減な
       ものだと思い込む傾向が
       あるからね。
 
 直感でこの意見が正しいと思い込んでいるだけの人間が、対立意見を、それは仮説でしかない、断片的なデータをつないだいい加減な仮説だ、とか言い出すのだ。それが人間の奇妙にずさんなところでもある。
 
 実際には、どんなものも推論や仮説でしかない。ただし、推論や仮説には手堅い、手堅くない、妥当、妥当じゃない、そういう違いがある。
 
 推論が手堅いか、手堅くないか、そこが重要だ。
 
 *論理的に正しいだの、確信があるだの、矛盾がないだの、そんなことどうでも良い、というのは、ひとつはこれが理由。
 
 **別に理屈がめちゃくちゃでも良い、と言っているわけではない。理屈の筋道が通ったぐらいで、ふー満足じゃ、と座り込んでどうする、という話。そこはスタート地点でしょ。
 
 そうである以上、その推論が手堅いか確かめるだけでは、ちょいと足りない、手堅い推論を得るにはどうすれば良いか、それを考える必要がある。
 
 
 ∧∧
(‥ )予報や発表によると、現状、
\–   関東に届いている黄砂は
     ごくわずか、あるいは
     事実上、なし、
     そういう状況みたいですね
 
 (‥ )推論的に黄砂を見つけるには
     しばらく時間がかかる
     そういうこったな。
 
 これは見方を変えれば次のようなことでもある。
 
 ∧∧
( ‥)3月10日に観察した粒子が
    あまりに大きいので、これは
    黄砂ではない、
    そう結論するのは
 
 (‥ )ある微小な鉱物を指し示して
     これが黄砂だ、と主張するより
     ずっと手堅い推論
     なんだよね。
 
 
 

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